コラム58:弁護士 松縄 昌幸

自動車保険の弁護士費用特約について

2017.12.27 弁護士 松縄 昌幸

 自動車保険の弁護士費用特約というものをご存知でしょうか。認知されてきたのか加入率が上がってきており、交通事故について、弁護士費用特約を使ったご相談、ご依頼を受けることがかなり多くなってきました。もっとも、この特約の存在自体を知らない、あるいは、存在自体は知っていてもどういう内容のものか知らない、という方も多くいらっしゃいます。そこで、より多くの方に知っていただきご利用いただくため、以下、弁護士費用特約の概略をご説明したいと思います。

弁護士費用特約とは
 弁護士費用特約とは、大まかにいうと、被保険者の方が自動車に関わる交通事故の被害にあったことで被った損害については、加害車両の運転者や所有者等の賠償義務者に損害賠償請求を行って支払ってもらうことになりますが、それにあたって弁護士に相談する際の法律相談費用、あるいはもっと進んで弁護士に依頼する場合の弁護士費用を保険会社が負担してくれる保険商品ということになります。保険会社によって異なりますが、支払限度額は、概ね、1事故につき、被保険者1名あたり弁護士報酬等の弁護士費用300万円、法律相談費用10万円となっています。

適用される場面
 被保険者にどこまでの範囲の人が含まれるか、つまり、どのような人が被害者になった場合にこの特約が使えるかについても、保険会社によって異なりますが、通常、以下のような方は被保険者に該当するものとされています。

 ①保険契約において被保険者として名前が記載されている記名被保険者
 ②記名被保険者の配偶者
 ③記名被保険者またはその配偶者の同居の親族
 ④記名被保険者またはその配偶者の別居の未婚の子

 したがって、ご自身はこの特約に入っていなくても、ご家族の入っている特約が適用されるということもあります。
 また、自動車に関わる交通事故の被害にあったことが前提のため、ご自身が自動車乗車中の事故に限らず、歩いている時や自転車を運転している時に被害にあった事故でも、相手が自動車であれば適用されます。

弁護士費用特約のメリットは
◎弁護士費用の負担の大幅な軽減
 まず、弁護士費用の負担の軽減があります。特に、物損事故や人身事故であっても後遺障害が生じておらず通院期間も短い等で損害額が少額な事故について、その効果は大きく表れます。弁護士を使えば一定の弁護士費用がかかるため、損害額が少額な事故の場合では、最終的に手に出来る金額に対して弁護士費用の比重が大きくなってしまい、費用対効果が合わないということが多くあります(場合によってはマイナスになることもあります)。
 特に物損事故については、被害額が10万円や20万円という事故も多く、そのような事故で弁護士をつけてその報酬を支払うというのはおよそ割に合いません。もっとも、被害金額が小さいからといって、事案が単純で解決が簡単かというと必ずしもそうではありません。弁護士をつけないでということになると、交渉で解決できなかった場合、自分で裁判を行うということにもならざるを得ませんが、法律の専門家でない方にとって、裁判を行うということは決して簡単なことではありません。そのため、半ば泣き寝入り的なことも多くあったかと思いますが、そのようなケースであっても、弁護士費用特約が付いていれば弁護士を付けて対応することができます。
 そして、そのような損害額が高くない事故であれば、弁護士報酬が上限額を超えることは通常考えられませんので、実質的な費用負担なしで弁護士を使うことができます。なお、弁護士の側から見ても、損害額は少ないが労力がかかるという事案であっても、方式として時間制報酬(タイムチャージ)方式を採用することで労力に見合った報酬を得ることができるため、損害額が少ないから悪いなどと思って躊躇する必要もありません。
 死亡事故や重度の後遺障害が残存した等の賠償額が高額となる事故については、もともと弁護士を付けて裁判まで行うということが多かったでしょうから、特約によって初めて弁護士を使えるようになるというメリットは当てはまりませんが、これら事故についても、最大で300万円も弁護士報酬の負担が軽くなりますから、やはり大きなメリットがあります。

◎得られる賠償額の高額化
 怪我を負った場合の人身損害については、費目によって(例えば、傷害慰謝料や後遺症慰謝料等)、自賠責保険の基準、任意保険会社の基準、裁判・弁護士基準の3つの基準があります。賠償の基準については、自賠責保険の基準が最も低く、裁判・弁護士基準が最も高くなっていますが、弁護士が加害者側に請求を行う場合、裁判・弁護士基準で請求を行い、その基準をベースに話を進めていくことになります。
 したがって、弁護士が関与した場合の方が賠償額が高額になり、100万円以上も金額が変わってくることも多くあります。

◎保険の等級は下がらない
 事故で保険を使った場合、原則として保険の等級が下がり、その結果、保険料が増額となります。もっとも、弁護士費用特約だけを使った場合、保険の等級は下がりません。

◎相談、依頼したい弁護を選べる
 弁護士費用特約を使って弁護士に相談、依頼しようとする場合、自分で選んだ弁護士に相談、依頼をすることができます。もともと知っていて信頼している弁護士に相談、依頼することもできますし、交通事故に詳しそうな弁護士をインターネット等で探してその弁護士に相談、依頼することもできます。
 特に知り合いの弁護士や希望の弁護士がいない場合には、保険会社に任せれば家の近所に事務所がある弁護士等を選んでもらうこともできます。

デメリットは
 もちろん、弁護士費用特約を付けた場合、その分保険料は増額となります。もっとも、弁護士費用特約の保険料は年間2,000円から3,000円程度のところが多いため、付けた場合のメリットを考えた場合、その負担は小さいと言えます。

最後に
 ご相談、ご依頼を受ける弁護士の立場としては、弁護士費用特約のメリットは大きいと思います。多くご相談をお受けする中で、弁護士を付けたいけれど費用の関係で付けることができない、弁護士費用特約に入っていれば良かったとおっしゃる方に出会うこともしばしばあります。また、弁護士費用特約に入っていらっしゃるか聞いてみると、分からないという方も多くいらっしゃいます。まずは弁護士費用特約に入っていらっしゃるか、ご家族が入っている場合に自分が被保険者に当たるかを確認していただき、もし入っていない場合には検討されることをお勧めします。
 その上で、もし交通事故の被害にあってしまった場合、早めにご相談下さい。弁護士費用特約はどのタイミングでも使うことができますが、弁護士が付くタイミングが早ければ早いほど、お力になれることも多いと思います。

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 当日は20人を超える方が参加し「自筆証書の保管手続きの新設は大変よい知らせでした」といった感想が多く寄せられました。

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