こころの島

 中学2年生の時、ミクロネシア連邦のある島で過ごしました。
 出発直前まで用意もせず、全く行く気がなかった私。母親が荷物を用意し、背中を押されて私は嫌々ながら飛行機に乗ったのでした。

 はじめて家族と長期間離れて過ごしたのは、電気も水道もない小さな村。
 トイレは海の上に作られた手作りの小屋らしきもの。バナナの葉っぱを編んだ家に寝泊まりし、椰子の実を採り、マングローブが生い茂るジャングルから採ってきたオレンジや木の実、バナナ、海で仕掛けてとった魚などで生活します。
 現地の人は、男性はふんどし、女性は植物を編んだ腰みの。男女ともに上半身は何も着ません。
 
 満月の夜に月明かりの下、波打ち際にたくさんあがってきた蟹たちを村の人たちと共に夢中で捕まえたことをよく覚えています。昼間は子供たちと一緒に木にぶら下がって、どこまで飛べるか競争したりして、楽しく過ごしました。
 いつの間にかすっかり村での生活に順応して、裸足で元気に過ごしていたのでした。

 当時、ぱっとしない中学生生活で鬱屈していた私は「生きている」ことを実感し、生まれてはじめて「何にもないのに、このしあわせってなんだろう」と考えました。

 思い出すのは、村の人たちの生き生きした笑顔。
 犬たちが呑気に浜辺で昼寝をしている姿。
 真っ青な空とあたたかい海の浜辺。

 自然にあるモノ、自然界で起こる現象を日々の暮らしに活用し、工夫し、助け合いながら生きることの力を体感して日本に戻ってきました。

 島での経験は大人になるまで、たびたび私の心の原点となっています。
 学校や自分のいる社会が窮屈に思えた時。
 島を思うと、世界はここだけではない、ちっぽけな悩みごとだなと思えたのでした。

 現在、母親になった私には発達に凸凹がある個性的な娘がいます。
 日本の画一的な一斉教育に当てはめようとするとしんどいところですが、順調にはみ出す娘の姿を愛おしく、楽しく見守ることはできています。それも、私の心の中に南の島があるからではないかと思っています。

 先にも後にも無理矢理という事がなかった親ですが、四姉妹全員をある時期、それぞれ海外(不自由なところ)に出すと決めて実行した親には今更ながら感謝しています。

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ISBN:978-4-535-52526-9

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