司法予算と軍事予算を比べてみると...

 みなさんは司法(裁判所)予算はどれくらいか御存知でしょうか。国の統治機構の三権(立法、行政、司法)の一つなので、どんなに少なくても10%くらいはあるかなと思っているのではないでしょうか。
 実は司法予算は年間約3000億円で、国家予算の0.3%に過ぎません。そしてこの20年間ほとんど変わっていません。むしろ序々に減ってきています(別表参照)。
 それに比べて防衛費はどうでしょうか。2021年度の補正予算だけでも約7000億円。当初予算と合計すると初めて6兆円を超え、6兆1744億円になっています。歴代政権が不文律にしてきたGDP(国内総生産)1%を突破します。
 補正予算の中身をみると、哨戒機やミサイル等の武器類の代金です。安倍政権が米国製武器を爆買いしたものを後年度で負担する「ツケ払い」なのです。2022年度もその分は2兆9022億円となり、前年度比11.8%も増えます。また、これまで「思いやり予算」と呼ばれてきた在日米軍駐留経費。米軍は日本国内の基地をタダで使用し、上下水道費も払わないで居座っています。それらの経費は日米地位協定上は米軍が負担することになっているのに日本が「思いやり」で負担しているわけです。
 それを今年度予算では「同盟強化予算」と名付けています。そして2022年度以降、5年間の平均額は約2100億円になっています。その上、日本はすでに米軍駐留経費の約75%を負担していますが、自衛隊と米軍が共同使用する訓練機材を「訓練資機材調達費」という新しい費目をつくって、5年間で最大200億円を負担するのです。なんという大盤振る舞いでしょうか!背景には昨年4月の日米首脳会議で「防衛力の強化」を約束し、先の衆院選挙で自民党は防衛費の「対GDP比2%以上」を公約していることがあります。現政権が続く限り防衛費は増大し続けるでしょう。
 こうしてみると司法予算が防衛予算とは桁違いに少ないことが分かりますね。ちなみに司法予算は防衛予算の5%にしかならないのです。
 前山亮吉著『近代日本の行政改革と裁判所』(P5)によれば、戦前の昭和2年の統計でも陸軍省、海軍省の合計予算は4億6747万円で、これに対し司法省予算は3735万円で7.98%を占めています。国家予算からみても日本は戦前以上に軍事大国であることが分かります。
 私は長年、地域司法の充実を目指す活動をしてきました。実感しているのは‶司法格差〟です。
 裁判所とはいっても裁判官の常駐しない裁判所支部。家庭裁判所出張所があっても受付だけで調停をしない裁判所。市民参加の重要な制度である裁判員裁判や労働審判を実施しているのは全国203ある支部の中で前者は10、後者は5支部しかありません。地裁によってこんなにある‶司法格差〟を解消するには何が必要でしょうか。物的人的充実です。そして裁判所からいつもいわれることは「予算」のことです。憲法の恒久平和原則に反する軍事費を増大するのではなく、国民の「裁判を受ける権利」を保障するためにこそ国家予算を使ってほしい、司法予算を拡大する、それこそが「平和国家」「法治国家」日本の歩むべき方向ではないでしょうか。
 政府の設置した「司法制度改革審議会」が20年前に意見書を出しています。この中で「法の精神、法の支配がこの国の血と肉となる」「国民の一人ひとりが統治客体意識から脱却して(中略)統治主体として」社会に参画していくことを強調していたことを改めて思い出し、司法を含めてこの国の政治を抜本的に変える必要性を痛感しているこの頃です。

【裁判所予算額及び裁判所予算の割合の推移】(別ウインドウ)

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