杉井静子著
『ジェンダー平等社会の実現へ─「おかしい」から「あたりまえ」に』を読んで
『ジェンダー平等社会の実現へ─「おかしい」から「あたりまえ」に』
杉井 静子 著
日本評論社
税込 2,640円(本体価格 2,400円)
発刊年月:2023.01
ISBN: 978-4-535-52689-1
13歳と1歳の子育て中。
仕事をしながら慌ただしく過ごす日々の生活の何でもない場面で「あれ?」「おかしい」と疑問に思うことがしばしばあります。
「これって私が女性だから感じること?」
自分の心の深いところにいつの間にか染みついている、
「女性だから」「母親だから」という意識が一体どこからきているのか。
親世代、そのまた親世代そのまた…と遡り、
家族や社会から無意識に「こうあるべき」と受け継がれていることは
歴史的な経緯や社会的背景からきているのだとこの本で学び知ることができます。
明治民法による家制度の中で男性中心の社会が、時の政府の政策で形づくられ、
国にとって都合の良い形となったこと。(戦争し易い国へと)
令和の今でもはびこる古い家族観、首をかしげる不平等。
差別と戦ってきた人々の運動のおかげで今があることを思いつつ、
自分の中に巣食っている意識をとらえ直すことができます。
著者の弁護士としての実感実体験に基づいた切り口は読みやすく、一つ一つを身近に感じながら読み終えることができました。
例えば、あたりまえのように存在すると思っていた「戸籍」ひとつについても、
何も知らなかった、考えたこともなかったのですが、家族制度の残滓だということがよく分かります。
この本には女性に限らず誰にとっても「おかしさ」に確信を持ち、声をあげるための基礎知識が盛りだくさん。
学校では教えてくれない歴史、法律の側面から多くの視点を与えてくれる本です。
日々の「?」たちに誰もが声をあげることのできる世の中になれば…と心から願う気持ちになりました。
皆さま、ぜひお手にとってみてください。
─余談ですが、ふと幼いころ母の日に一枚の絵をプレゼントしたことを思い出しました。
大きなお城にいる家族。王さまの父親が一番上の大きな部屋、子どもたちがいる部屋があって、お妃さまの母親は小さな小さなキッチンの部屋にいるという絵。
おまけに私は「今日はなんのご馳走つくってくれるの~?」と母に聞いたそう。
未だに母が「母の日だったのに~」と笑いながら話すことがあります。
何の違和感もなく、そのような絵を描いていたのですね。
我が子は果たしてどんな絵を描くようになるのでしょうか。たのしみです!