言葉によってつながるからこそ人間!
100回目 所長のつぶやき

1.この欄も100回目
 ひめしゃら法律事務所は、2009年4月に設立されたので、今年で15周年を迎えました。この間の皆さま方の御支援・御協力に改めて感謝申し上げます。

 事務所設立後の同年11月に事務所や所員の御紹介、イベント等のお知らせ、アクセスの仕方などを御案内するためのホームページ(https://www.himesyara.com)の中にこの欄(コラム欄)をもうけました。

 事務的な情報提供だけでなく、“ちょっとひと息〟といったコーナーとして、その時々各所員が感じたことを自由につづってきたものです。今回で記念すべき100回を迎えました。
 標題と執筆者の一覧を末尾に揚げておきました。興味と関心のあるものをこの際改めて選んで読んでみて下さい。所長の私がいうのもなんですが、各所員が日常業務の中で感じていることは勿論、関連しない趣味や家族のことなど「うんちく」あふれるもの満載です。

2.朝日新聞「折々のことば」
 2015年春に始まった鷲田清一さんの「折々のことば」もこの3月16日に3000回を迎えたといいます。私も大ファンで、いつも楽しみにしておりかつ刺激をうけています。詩人の佐々木幹郎さんは「折々のことば」について、「ことばを発する者と受け取る者の間に『単方向に痩せ細ったのではない、膨らみのある双方向の関係』を持っていることが大事なのだ」といっています。鷲田さん本人も山根基也さんとのトークの中で「言葉って誰か特定のものじゃなくて、皆がそれぞれの思いで発しているものだから。台所ならぬ紙面に転がっている民主主義。この欄を一種の広場、共和国みたいにしたかったんです」と述べています。さらに今の世の中、ウソの言葉もいっぱいあるなかで何を信じるかは、一人ひとりの言葉との付き合い方に関わっているという趣旨のことをいっています(2024.2.16折々のことば3000回 言葉を探すことは聴くこと)。

3.なぜヒトだけが言語を持つのか
 最近「言語の本質」(今井むつみ・秋田喜美著 中公新書)を読みました。子どもはいかにして言葉を覚えたのか? ヒトとAIや動物の違いは?を問いながら、言語の本質と人間とは何かを考える本でした。鍵は「わくわく」「もふもふ」などの「オノマトペ」と「アブダクション(仮説形成)推論」とのこと。オノマトペは音で対象を写し取る「アイコン性」を強く持っている。人間の祖先は発声でアナログ的に外界のモノや出来事を模写していたのが徐々にオトマトぺに変わり、それが文法化され体系化されて現在の記号の体系としての言語に進化していったのではないか。そして知識を想像力によって拡張したり、ある現象から遡及して原因を考えたり、一番もっともらしい説明を与えようとする人間の思考スタイルが「アプダクション推論」で、これが出来るのは「ヒト」だけ。この推論は誤った結論に至る可能性があるが、誤りを修正することで物事の理解は深められる。科学においても、仮説をたて実験をし、実験の結果が仮説と異なっていたら仮説を修正することによって、人類の科学的知識は発展してきた。アプダクション推論は、新たな知を生み出すものであり、人間特有の学ぶ力だということを学びました。

4.ネット(デジタル)時代にあって私たちは…
 私は自らはメールもSNSもしない典型的なアナログ人間です。このままでは時代に取り残されてしまうという危機感ももっていますが、同時にこのままデジタル化が進んでいっていいのだろうかと多いに疑問をもっています。哲学者の佐伯啓思さんはSNSが真偽不明の情報をたれ流している今日、さらに今後生成AI(人工知能)が広範囲に使用されれば、「フェイク」と「事実」の区別を問うことさえ意味を失いかねず、AIによって捏造されたバーチャルな事実がわれわれの意見や行動を左右しかねないとして「このような近未来にわれわれは民主主義に信頼をおけるのであろうか」と警鐘を鳴らしています(2024.3.30朝日新聞「トランプ現象と民主主義」)。
 そしてソクラテスを引用しながら意見は違っても「幸福とは何か」「よい社会とは何か」についての熟度と節度をもった論議がなければならない。言論の「競技」ではなく、言論の「問答」、それが真理に近づく方法であるともいっています。議論と対話の必要性とその方法(論戦で勝つことを目的としない)の重要性の指摘です。

5.海女文化が導く持続可能な社会
 東京海洋大学教授の小暮修三さんは、最近「海女とSDGs」に関心を寄せているとのこと。たとえば三重県鳥羽・志摩地方の海女は、禁漁期間や禁漁区を自主的に定める。壱岐市の海女は、長時間潜っていられるウェットスーツの着用を禁じている。乱獲を防ぎ、水産資源を守る知恵。不便で効率が悪いからこそ、海女漁は続けられるともいえる。「海女文化のありようは世を覆う強欲資本主義に対するオルタナティブ(代替の選択肢)でもある」とも。
 ソーシャルメディアが資本主義を限りなく拡大し、加速し「タイパ(時間短縮)」「コスパ(コスト削減)」で追いたてられる今日です。
 私は今年で弁護士歴55年になりますが、弁護士の仕事の大半は相談者・依頼者の「相談相手」であると思っています。聴くことに徹する法律相談こそが、ロートル弁護士の役割かなと思っている今日この頃です。

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 多くの方のご参加お待ちしております。

日 時/6月22日(土)10時~12時
会 場/トムハウス(鶴巻・落合・南野コミュニティセンター)
東京都多摩市落合6丁目5番地
電 話:042-371-8806
参加費/無料

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