101回目の・・・

 飛行機が上空を飛んでいるとき、給湯器が動いているとき、野外コンサート会場の近くを通るとき、何かお腹のあたりや胸のあたりを締め付けるような、圧迫するような、そんな感覚に陥ったことはありませんか?
 それ、「低周波音」が原因かもしれません。
 そんなわけで、コラム101回目は、プロポーズについてではなく「低周波音」についてです!

1 低周波音とは?
 「低周波音」という言葉を聞いたことがあっても、「低周波音」が一体何なのか、それがわからないという方も多いと思います。今日は、その「低周波音」が何者なのか、「低周波音」は人間にどんな影響及ぼすのか、それをごく簡単に説明したいと思います。

(1)音の基本
 まず、「低周波音」も「音」の一種ですから、「音」とは何かということを説明したいと思います。
 実は「音」を説明しようとすると、非常に難しいのです。皆さんも「音」を説明しようとしてみてください。厳密に説明しようとすると、とても難しいことに気がつくはずです。
 なるべく簡単に説明すると、「音」とは、空気の微小な振動のことをいいます。「音」が発生すると、その周りの空気が押されたり、引っ張られたりしながら、周囲へ、波として空気の振動が広がります。静かな水面に小石を投げたときに波紋が広がるイメージです(「音」の場合はそれが立体的に360°全方位へ広がります。)。
 その波が、人間の耳に入り込み、鼓膜が振動すると、人間は「音」として感じることになります。

 次に「音」についての指標を二つ紹介しましょう。
 ひとつめは、「音の大きさ(音圧)」に関するものです。「音」は前述のとおり、波なので、波の高さ(振動の幅)が大小さまざまあります。波の高さ、すなわち、振動の幅が大きいと大きな音、小さいと小さな音になります。これを表す単位として、「デシベル(dB)」があります。
 ふたつめは、「音の高さ(周波数)」です。こちらは波の幅ではなく、波の回数(振動する回数)で表します。1秒当たりの振動する回数が多い場合には高い音、少ない場合には低い音になります。これを表す単位として、「ヘルツ(Hz)」があります。

(2)低周波音
 ここで、やっと「低周波音」の登場です。先ほど紹介した周波数によって、音を次のように区分けすることがあります。
 音波:周波数が高くて耳に聞こえない音  20,000Hzを超える音
 可聴音:人間の耳が聴き取れる音  およそ20Hz~20,000Hzの音
 低周波音:  1Hz~100Hzの音
 つまり、「低周波音」とは、周波数(音の高さ、振動の回数)が少ない音で、1Hz~100Hzの音のことを指します。ざっくり言えば、「低い音」ということです。そして、「低周波音」のうち、20Hz未満の音を、「超低周波音」という言い方もします。こちらは、人間の聴き取れる音域(可聴音)から外れているため、耳では聴き取れない低い音ということになります。
 ちなみに、人の話し声は、だいたい200Hz~4,000Hzの音域で、一般的な聴力検査では、1,000Hzで30dBと4,000Hzで30dBの音が聞こえるかどうかを検査します。

 ところで、低周波音には主に三つの特徴があると言われています。
 ひとつめは、「回折性が高い」ということです。回折性とは、音が塀などの障害物を越えて、その背後に回り込むことを言います。音に対して光は、何か障害物があるとその裏側には影ができ、裏側は光が当たることはありません。しかし、音の場合は裏側に回り込むことができるのです。そして、特に低周波音の場合には、回り込みやすさが他の周波数帯の音よりも高いのです。例えば、山の向こうで行われている花火大会のドーンという音や野外ライブの重低音が聞こえてくるというのは、回折性が高いためです。
 ふたつめの特徴として、「マスキング効果」を受けやすいということです。マスキング効果とは、ほかに音があるとその音に紛れて聞こえにくくなるというものです。低周波音では、その特徴が出やすく、例えば、窓を閉め切ると低周波音以外の音は聞こえなくなるものの、低周波音だけは残ってしまうということが起きます。
 みっつめの特徴は「伝播性が強い」というものです。音は通常、地表面や空気によって吸収されて、距離が離れれば離れるほど音が小さくなる傾向があります。しかし、低周波音の場合は、それが起きにくく、遠方まで伝わりやすいのです。

 では、低周波音の発生源にはどのようなものがあるのでしょうか。
 低周波音を発生させるものが固定されている場合(固定発生源といいます。)として、送風機、ボイラー、給湯器、室外機などが挙げられます。
 低周波音を発生させるものが固定されていない場合(移動発生源といいます。)として、ヘリコプターや飛行機などが挙げられます。風車が羽を動かすときや新幹線がトンネルを通過するときに発生する音も低周波音です。


横田基地に飛来したアメリカ空軍の爆撃機B-52Hストラトフォートレス。
低周波音の発生源のひとつ(2024年4月4日撮影)

2 低周波音に関する環境基準値はあるか?
 では、低周波音が大きく発生している場合、何か法律上、制限や基準はあるのでしょうか。
 ここでは、航空機や軍用機に関する規制などを挙げます。まず、低周波音ではない音の場合の基準についてですが、
 環境基本法に基づく航空機騒音に関する環境基準 57dB(指標Lden)、
 防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律に基づく62dB(指標Lden)
とされています。Lden(エルデン)とは、ごく簡単にいえば、騒音測定の結果に、昼間、夕方、夜間の騒音について重みを付けた評価方法のことですが、ここではそれがなにかということよりも基準が定められている、ということを覚えておいてください。

 他方で、低周波音の場合ですが、実は環境基準というものはありません。
 2004(平成16)年6月に、環境省が出した「低周波音問題対応の手引書」という冊子には、低周波音に関して「心身に係る苦情に関する参照値」と「物的苦情に係る参照値」というものが載っています。しかし、これは、行政が、市民から寄せられた苦情・相談の原因が低周波音かどうかを判断するための基準として用いられているものです。しかも、低周波音を発生させているものが固定されたものであることを前提としているため、航空機による騒音は対象外とされているのです。
 この参照値が公表されてから20年経ちますが、飛行機のような移動発生源の場合の環境基準が定められていないことは大いに問題があるといえるでしょう。

3 低周波音による人間への影響
(1)身体的影響
 低周波音の人間への影響は、大きく分けて身体的影響と物的影響の二つがあります。
 まず、身体的影響ですが、心理面に出てくる影響、生理的な面に出てくる影響に分けられます。
 人間は、低周波音を感知する(音として聴き取る、振動として感じることの両方です。)と、それが嫌だと感じます。それによってストレスとなり、その影響が身体に出てきます。影響が出てくる順番としては、心理的影響、生理的影響の順です。
 心理的影響としては、よく眠れない、気分がイライラする、胸や腹を圧迫されるような感じがするなどです。
 生理的影響としては、頭痛・耳鳴りがする、動悸・吐き気がするなどです。

 沖縄で行われた騒音測定を基にした研究では、MV-22オスプレイの騒音のうち、低周波音成分の一部の計測値が前述した環境省の「心身苦情参照値」、「物的苦情参照値」を上回っています(田崎盛也「沖縄県における軍用機から発生する低周波音について」日本音響学会 騒音・振動研究会資料 N-2015-64)。同研究によれば、オスプレイの騒音は、20Hzと40Hzにピークがある特徴的な音で、40Hzの成分が人間に知覚されやすく、圧迫感などをもたらしていると分析しています。


横田基地に配備されているCV-22オスプレイ(2023年5月21日、横田友好祭で撮影)

(2)物的影響
 続いて、物的影響ですが、低周波数による振動(低周波音)が発生すると、それが物に当たり、その物固有の振動しやすい周波数と一致し始めると共振が起こります。それによって、戸や窓などの建具がガタガタする、置物が移動するなどが起こるのです。このとき、人間の耳には音として感じることができないことがあります(つまり、超低周波音です。)。
 さらに、二次的な心理的影響として、物が振動することで、それの対する不安感や恐怖感などといったものが生じてくることがあります。

4 第三次新横田基地公害訴訟
 現在、第三次新横田基地公害訴訟が東京地方裁判所立川支部に係属しています。
 同訴訟では、静かな空を求めて、夜7時から翌朝7時までの飛行差し止め、CV-22オスプレイの終日飛行差し止め、騒音による基地被害の損害の救済を求めています。
 訴訟の中で、オスプレイに関する主張や、低周波音に関する主張もしているところです。
 訴訟はまだまだ道半ばですので、ご興味が湧いた方はぜひ、裁判所まで傍聴にお越しください。

【今後の裁判日程】

第7回口頭弁論:2024(令和6)年10月10日(木)午後2時~
第8回口頭弁論:2024(令和6)年12月12日(木)午後2時~
第9回口頭弁論:2025(令和7)年3月6日(木)午後2時~
場所:いずれも東京地方裁判所立川支部101号法廷
※当日、傍聴券または傍聴整理券が配布される予定

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会 場/トムハウス(鶴巻・落合・南野コミュニティセンター)
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電 話:042-371-8806
参加費/無料

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