コラム28:面会交流は誰のために

2013.10.17 弁護士 杉野 公彦

 面会交流に関する事件について、実務家としても対応を検討する必要がある決定が最高裁で出ました。
事案は、子どもと離れてしまった父親が、子どもとの面会交流を求め、「月1回、母親の元にいる子どもと面会交流できる」という審判が確定した後も、父親と子どもとの面会交流を拒否している母親に対し、家庭裁判所に間接強制の申立をしたものです(父親と母親は既に離婚しています)。
家庭裁判所は「母親が父親と子どもとの面会交流を認めなければならない」と命ずるとともに「母親は面会交流が1回不履行になるごとに5万円の割合による金員を父親に支払え」と命ずる決定(間接強制決定)をし、これに対する母親による不服申立は棄却されました(平成24年(許)第48号事件)。
全ての事案に適用できる決定ではありませんが、子どもと離れている親が、子どもとの面会交流を拒否する子どもを監護している親に対し、金銭的な圧力をかけて面会交流を実現することも可能であることを裁判所が認めた形になります(繰り返しになりますが、全ての事案に適用できるわけではありません)。
家庭に関する事件を数多く扱っていますと、中には父子関係、母子関係は悪くないのに離婚した当事者同士の感情の対立のみをもって面会交流がなかなか実現しない、実現しても続かないというケースがあります。
ですが、例えば子どもそのものへの虐待があったり、親同士のDVを日常的に目の前で見せつけられ、子どもがPTSDを負っているなど子どもが親と会うことを恐れている場合、さらに、面会した子どもを奪取してしまう可能性が高い場合など、子どもと離れてしまった親が面会することが必ずしも相当でない事案もあります。
また、仮に間接強制決定がおり、一方への金銭支払いを盾に実現した面会交流が、本当に子どものためになっているのか、以降の持続的な面会交流につながっていくのかという疑問もあります。
面会交流は誰に認められた権利であるのか?学説的に統一を得ていないところですが、いずれにおいて少なくとも面会交流は子どものためのものであると考えます。
家事事件を扱う手続代理人弁護士の立場からすれば、一方が他方を金銭でもって縛るのではなく、子の福祉のための円満な面会交流が実現することを希望するばかりです。

△このページのTOPへ

コラム一覧ページへ

冊子紹介

相談について
取扱分野一覧

離婚相続・遺言不動産、労働、交通事故、消費者被害、成年後見、中小企業・NPO法人・個人の顧問業務、法人破産、債務整理、行政事件、医療過誤、刑事事件、少年事件、犯罪被害者支援、その他

line

「取扱分野一覧」へ >>

新着情報

お知らせを追加しましたNEW
4月の定例相談日を掲載しました

 

コラムを追加しましたNEW
杉井 静子 著
『ジェンダー平等社会の実現へ─「おかしい」から「あたりまえ」に』を読んで

『ジェンダー平等社会の実現へ─「おかしい」から「あたりまえ」に』 杉井 静子 著 日本評論社 税込 2,640円(本体価格 2,400円) 発刊年月:2023.01   ISBN: 978-4-535-52689-1 1…

お知らせを追加しました
3月の定例相談日を掲載しました

 

お知らせを追加しました
杉井静子弁護士 婦人民主クラブで記念講演予定

 杉井静子弁護士は3月12日、東京都内の全国教育文化会館内にて開催される婦人民主クラブ創立77周年記念のつどいで「女性が輝いて生きられる社会へ ~私の弁護士活動を振り返りつつ~」(仮題)というテーマで記念講演を行います。

コラムを追加しました
第3次新横田基地公害訴訟を提起しました

 皆さんは、多摩地域にも米軍基地があることをご存じですか。  東京都西部の立川市、昭島市、福生市、武蔵村山市、羽村市、瑞穂町にまたがる米軍・横田基地は、国内最大級の米軍基地であるとともに、在日米軍司令部が置かれ、在日米空…

コラムを追加しました
「あたらしい憲法のはなし」

 といっても、令和の御世に令和らしい新しい憲法を!、ということではありません。  これは、文部省が、1947年5月3日に施行された日本国憲法の解説のために発行した新制中学校1年生用の社会科の教科書のタイトルです。この教科…

お知らせを追加しました
年末年始休業のお知らせ

 誠に勝手ながら、下記期間を年末年始休業とさせていただきます。  何卒ご理解とご協力のほど宜しくお願い申し上げます。 【年末年始休業期間】 2022年12月27日(火)~2023年1月5日(木)

「新着情報・お知らせの履歴」へ >>

ひめしゃら法律事務所

HOME
選ばれる理由
所属弁護士
弁護士費用
アクセス・交通案内
コラム・活動