コラム39:弁護士 宮本 康昭

女性議員多数入閣

2014.11.16 弁護士 宮本 康昭

1,
 報道は「客観報道」であるべきだといわれます。事実を伝えることに徹すべきだというのです。それはその通りだと思いますが、しかし事実の表層を伝えるだけでは報道の使命を果たしたことにはなりません。ジャーナリズムには伝えるべき「真実」を伝える責任があります。でなければメディアはただの情報屋でしょう。

2,
 メディアは第二次安倍内閣に5人の女性議員が入閣したことを伝え、その紹介に大きな紙面を割きました。そしてその紙面は各紙ともいわゆるお祝儀記事で埋められました。その直後の世論調査では安倍内閣の支持率は軒並み5~8%急上昇しました。女性閣僚多数誕生のニュースが影響しているのは明らかです。
 しかし、「女性議員多数入閣」を伝えるだけではメディアはジャーナリズムの役割を果たしたことにはなりません。閣僚になったのがどのような人物であるかを正しく知らせ、それが果たす役割をきちんと分析すべきです。「女ともだち入閣だ」程度のからかいでは到底足りません。

3,
 現実には高市、山谷、有村の三大臣は「伝統的家族観」の論者として知られていて、男女平等参画や夫婦別姓にも公然と反対を唱えていました。東京新聞はいまごろになって、この3人は「名誉男性」(この表現自体ジェンダーの匂いがありますが)といわれていたと書いています。3人とも10月18日にはそろって閣僚として靖国神社を参拝しています。
 山谷氏はヘイトスピーチで鳴らした在特会幹部と並んで写真を撮らせていました。同氏は相手がどんな人か知らなかったと言いますが、とんでもない。山谷氏は15年前から日本再生百人会の顧問で、その人はその百人会の事務局長なのです。
 高市氏は有名な日本会議(英霊にこたえる会会長であった元最高裁長官が会長)の議員懇談会の副会長、稲田政審会長も副会長です。
 メディアはそれらの事実を知っていたはずです。知っていたのに入閣の報道とともにそれを伝えることはやめようという「大人(・・)の判断」をしたのだと思われます。もし知らなかったとしたら、それはそれで怠慢としか言いようがありません。
 怠慢の例を上げましょうか。高市氏と稲田氏が別々に撮った日本のネオナチ代表とのツーショット写真が明らかになりましたが、これは日本のメディアが取材したのではなく、いずれもイギリスのガーディアン紙が報じたものの後追いだったのです。

4,
 安倍首相の支持率アップに対して、日本のメディアは責任があります。「女性入閣」は一例として引いたものです。メディアは、物事の進行を冷静に分析し、批判精神を維持し続けなければ、ジャーナリズムとしての資格を持っているとはいえません。
 日経編集委員だった牧野洋氏は、「ニュースを追いかける報道は『権力癒着型』報道と紙一重である」また、『権力監視型』報道は権力が発表したがっているニュースでなく隠したがっている秘密を明らかにする」と言っています(「官報複合体」講談社)

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