コロナ禍での裁判所における期日運営
令和2年1月16日、初めて日本国内での感染確認が認められたコロナウィルスは、気がつけばみるみる感染者を増やし、4月8日には、政府により緊急事態宣言が発令されたことは皆様の記憶にあると思います。コロナ渦そして緊急事態宣言の発令により、我々の事件対応も、事務所の運営も大きく形を変えることになりました。
まず、4月8日以降、裁判所に係属している期日のすべてが取り消しとなりました。宣言発令前までは、感染者の増大を横目に見ながら裁判所での期日自体は実施されていましたが、発令後はほとんどが次回期日の指定もないまま取り消されてしまい、クライアントを含む裁判所に事件解決をお願いしている方々は、一度に事件解決に向けての方向性を失うことになってしまいました。裁判所に係属している事件が進まないだけではなく、新しく裁判所に申し立てた事件も第1回の期日が入らず、また、継続中の事件の記録の閲覧や証明書の取得も実現に相当期間を費やさねばならないようになってしまいました。
緊急事態宣言そのものは5月25日をもって解除されましたが、だからといって翌日から裁判が再開されるわけではありません。今度は、取り消しになった期日を新しく設定し直さねばならず、それだけに6月一か月は費やされてしまった様子でした。
新たに期日を設定するだけなら難しいことではないかも知れませんが、裁判所の方でも感染拡大防止の観点から使用できる調停室、ラウンド法廷などを制限しましたので、これまで以上に過酷な期日における場所の取り合いという状況に陥りました。
7月からようやく裁判も調停も少しずつ期日を再開し始めており、8月、9月を迎え取り消されてきた期日も一通り実施の目処が立ったと言える状況です(少なくとも私の抱えている事件については)。ただ、4月に予定していた証人尋問が9月、10月に実施されるなど、少なくない事件が解決まで年をまたぎそうな雰囲気です。
さらに、現状、係属裁判所および担当裁判官にもよると思いますが、特に立川支部では、裁判(弁論準備期日)は原告被告双方電話での実施、または、裁判官との間にビニールでの仕切りを設置した上での対面での実施、調停も調停委員と当事者との間にビニールの仕切りをおいての実施となっており、いずれも手指の消毒、マスク着用が大前提です。
私自身も初めての経験ですが、裁判所に確認しましたところ、これほど長期間期日が入らない事態は裁判所でも初めてのようです。裁判所の方で全面的に進めたい「裁判手続のIT化」も裁判の迅速化、恒常的な実施の観点から利用者の皆様のご理解も進むのではと考えます。
ただ、まだコロナウィルスの脅威が去ったとはお世辞にも言えない状況です。感染しないよう感染させないよう期日の準備、期日への出頭をしながらも注意をしていきたいものです。