最初のひとくち 最後のひとくち

 僕がお酒を飲み始めた頃、ワインの値段が割といい加減でした。ワインを飲む人が少なくて、市場価格がこなれてなかったのでしょう。そのおかげで、安くておいしいワインを見つけることができました。でも、秘かに見つけた「掘り出し物」ワインが市場から認められてしまうと、どんどん値上がりしてしまいます。掘り出したワインが、値上がりしていくのは辛かったですが、目利き気分になれるうれしさの方がはるかに大きかったです。そういうわけで、今でも、ワインを探す時間が好きです。

1 まず、店選びが重要。店員さんと好みが合わないと最悪です。たとえば、Aという香りを誰もがAと感じるわけではないし、さらにそれを言葉で表現する作業は、途方もない伝言ゲームです。だから、単純に、ワインの好みが似ている店員さんを見つけるようにしています。その店員さんと僕とは、香りの感覚が似ているはずだからです。

2 家に帰ってワインを開ける瞬間は、ドキドキです。キャップシールをめくるとき、コルクが傷んでにじんでないか。コルクを抜いた瞬間の香り。グラスに注いだ色。その色と香りから想像して、香りがピークになるのは何時間後か。それを見越してどんなペースで飲もうか。温度はこのままでいいか。用意した食材はこのワインに合うか。あれこれ考えます。

3 一緒に飲む人数が増えれば、考えることも増えます。誰の好みに合わせて買おうか。味音痴のこの人は香りが開く前にガバガバ飲んじゃうな、逆に、好みが近いあの人とは最後の一滴まで奪い合いになるなりそうだな、とか。

4 こんな風にあれこれ思い巡らせますが、結局は、飲んでみないとわかりません。自分の体調や、場の雰囲気にもよりますし、その1本のワインが外国からどんな長旅をしてきたか、酒屋でどんな時間を過ごしたかまでは想像しにくいからです。

5 それでも、ワインを開けてからあとの変化は、少しわかるようになってきました。
① 最初のひとくちが少し物足りないくらいの方が、だんだんおいしくなる。
② 最初のひとくちがおいしいものは、だんだんくどくなってきて、飲みきれない。
③ バランスが良くスキの無いワインは、最後まで個性やニュアンスに欠ける。
⑤ バランスと個性の両方を求めると、僕のお財布では買えない値段になる。
⑤ まずいワインでも、ヨーグルトをツマミにするとなんとかなる。
⑥ 完全にハズレのワインでも、一晩おくと、嫌な風味が抜けてイケることがある。
⑦ 最初のひとくちも最後のひとくちも美味しいワインは、ほぼ無い。

6 くだらない長講釈を垂れてきましたが、ここからが本題です。
 上のような法則は、ワインだけではなくヒトにも当てはまらないでしょうか。
 外見や職業からどんな人かを想像したり、最初は好きだったけれど時が経つにつれ嫌いになったり、逆に、最初は嫌いだった人と結婚することになったり。二人きりだと気まずい人でも、誰か第三者(ツマミ)が一緒にいれば楽しいとか。年を取って丸くなる人とか。

7 弁護士の仕事もワインに近いと思います。裁判が終わるまで年単位でかかることもありますし、その間、相手方、相手方弁護士、証人、裁判官、家族等々、無数の人が出てきます。時間と登場人物に影響されて、最初に持った印象がガラッと変わっていることの方が多いでしょう。それを予想するのは、なかなか至難の業ですが、最初のひとくちから変化の幅を予想して、最後のひとくちがおいしくなるように手を打てる、そういう弁護士になれたらいいなと思います。
 ところで、本当にワインに例えられるべきなのは、弁護士なのか、依頼者なのか、裁判官なのか。自分は、飲んでるのか、飲まれてるのか。よく考えるとわからないですね。最初は、酒屋が弁護士事務所、ワインが弁護士のつもりで書き出したのですけれど。

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発刊年月:2021.04
ISBN:978-4-535-52526-9

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