コラム41:裁判所の「支部」問題

~裁判所立川支部の本庁化について~

2015.4.1 弁護士 伊吹 勝美

 ひめしゃら法律事務所は、東京地方家庭裁判所立川支部のすぐ近くにあります。
 東京地方家庭裁判所立川支部は、その名のとおり、「東京地方家庭裁判所(本庁)」の「支部」ということになります。

 地方裁判所(本庁)は、全国に50カ所(都府県に1カ所ずつ、北海道のみ4カ所)あり、裁判所支部は、203カ所あります。

 一般には、あまり知られていないかもしれませんが、裁判所の「本庁」と「支部」には、大きな違いがあります。

 いくつか例を挙げれば、行政事件は裁判所の「本庁」においてのみ取り扱われ「支部」では取扱われません。また、簡易裁判所の控訴事件(簡易裁判所の判決に不服がある場合は、地方裁判所で審理することになっています)も地方裁判所の「支部」では取り扱いません。したがって、これらの事件の当事者は、いくら自宅近くに裁判所の「支部」があっても、「本庁」まで出かけていく必要があります。

 また「本庁」には、市民の声を裁判所の運営に反映させるため、地方裁判所委員会、家庭裁判所委員会がそれぞれ設置されていますが、支部には設置されていません。他にもいろいろありますが、裁判所「支部」が持つ権限は、「本庁」に比べ大きく制限されています。

 この点につき裁判所立川支部の視点からみると、多摩地域の人口は420万人で東京都の人口の約3分1を占めていますし、都道府県人口と比較しても、福岡県に次いで全国10位に相当し、四国4県の全体人口も超えています。

 そして、裁判所立川支部の事件数は、全国に50カ所設置されている「本庁」と、比較すると、通常民事事件数は7番目、刑事事件数、少年事件数はいずれも9番目、家庭裁判所が扱う家事事件数については、4番目に相当するほど多くの事件を抱えており、他の本庁と同様かそれ以上の司法的役割を果たすことが期待されています。

 しかし、裁判所立川支部は、「支部」であることが影響してか、裁判官数は、東京地裁本庁の10分の1以下の人数であり、立川支部と同規模とされる横浜地裁本庁の半数以下となっています。

 これら裁判所支部の問題は、立川だけでなく、各地で問題となっています。

 そこで、主に裁判所支部管内で執務している各地の弁護士が集まり、司法の利用者である市民の視点に立って、裁判所の支部問題に取り組む「弁護士会支部サミット」が平成15年から毎年開催されています。

 10回目までは、首都圏の弁護士会支部所在地で開催されていましたが、11回目は長野県松本市で「裁判官が足りない~支部での労働審判の開設を目指して~」というテーマで、長野県内の裁判所支部に配属されている裁判官が圧倒的に不足している問題や、松本支部で労働審判が行われていないことに関する問題が議論され、12回目の今年は2月14日に新潟県長岡市で「市民に身近な家庭裁判所を目指して」というテーマで、現在新潟県内の家裁出張所で、調停、審判が行われていない点について議論がなされました。

 私は、弁護士会の所属委員会の関係で、松本、長岡の支部サミットに準備会の段階から参加しましたが、各地の支部管内の弁護士は、熱心に支部問題に取り組んでいます。

 現在、弁護士会多摩支部でも、裁判所立川支部を人口規模、事件数に即した「本庁」に昇格させるため、いろいろな取り組みを行っています。

 裁判所の支部問題は、予算の問題が関係するとともに、裁判所を利用する市民が直接、声を上げにくい面があります。法改正など解決すべき問題は多いですが、市民の皆さんにも御協力いただき、この取り組みが結実するよう努力していきたいと思います。

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