コラム34:弁護士 藤原 真由美

高齢社会で暮らしの安心をささえる弁護士のしごと

2014.5.23 弁護士 藤原 真由美

 2030年には、東京の人口の約3分の1を65歳以上の方たちが、20%を75歳以上の方々が占めるようになる、と言われています。食生活が豊かになり、医療や薬が発達して、みんなが長い人生を楽しめるようになったことは、素晴らしいことですよね。
 でも、反面、体調を壊したり、パートナーに先立たれ一人暮らしをしながら、これからの生活に不安を抱えておられる方も、多くいらっしゃるのも現実です。

 先日、三鷹市にお住いのAさん(65歳)から、ご相談の電話がありました。永年働いてきた職場を定年退職し、退職金で中古のマンションを買って老後に備えているという、一人暮らしの元気な女性です。これからは旅行なども楽しみたいと、旅行会社に行って気に入ったツアーを見つけたのはいいのだけれど、旅行中何かあった時の連絡先を書くように言われ、身寄りのない自分は書けずに困っている、とのこと。知り合いの法律事務所に電話をしたけれど、「それは法律相談ではない」と断られてしまったと、途方にくれたご様子。「とりあえず一度事務所にいらしてください。」と申し上げ、お話を伺うことに。

 事務所にいらしたAさんからお話を伺うと、親戚がみな九州に暮らしていて全く交流がないことや、自分が他界した後の遺骨やマンションなどの財産がどうなってしまうのか不安であること、自分が今後病気になったり、認知症になったりしたとき、一人暮らしの自分はどうなってしまうのか考えると夜も寝られないことなど、いろいろな悩みを抱えていることがわかってきました。これは何とかしてさしあげたいーそう思った時、ひらめいたことがありました。日本弁護士連合会が研修会などをひらいて弁護士に勧めている「ホームロイヤー制度」の活用です。言ってみれば、かかりつけのお医者さんと同じ、「かかりつけ弁護士」の制度です。

 弁護士は、法律的な問題がおきた時に、裁判をしてたたかうための存在と考えられがちです。でも、弁護士の大事な役割は、問題が起きないよう未然に予防したり、一人一人の日常の生活のなかで権利を守っていくことにもあるのです。そのためには、些細なことでも気軽に相談できる弁護士がいたほうが良い。多くの会社は、顧問弁護士を頼んで問題が起きないように備えをしています。個人の場合も、会社と同じく、いつでも相談できる顧問(かかりつけ)弁護士がいれば、消費者被害などにも会わなくてすむはず。特に資産を持っておられるがゆえに、詐欺グループや投資会社などのターゲットになりやすい高齢者の場合は、その必要性が高いと思われるのです。

 そこで、私はAさんの気持ちに即して、① 旅行をする場合の連絡先になって、もし何か事故が起きた場合に連絡を受けること、② 必要なときにはいつでも相談にのること ③ 半年に一度はこちらからAさんに連絡をして安否を確認すること などを内容とするホームロイヤー契約を結び、一年ごとに必要な項目を検討することにしました。Aさんは、安心して帰って行かれ、さっそく東ヨーロッパ旅行のツアー申し込みを終えたとのお電話をくださいました。「旅行から帰ったら、自分の財産を小さなNPOに遺贈する内容の遺言を書こうと思うので、その時はまた相談に行きますね。」とおっしゃったAさんは、「なんか、これから自分がすべきことが見えてきました。」と、うれしい言葉も。

 せっかくの長寿社会、健康に気をつけながら、自分のやりたいことを存分に楽しみ、無用な心配に心を閉ざしたりしないよう、弁護士がお役に立てたらなあと思っている、今日この頃です。

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