コラム49:弁護士 杉井 厳一

シェイクスピアとエリザベス一世

2016.8.15 弁護士 杉井 厳一

シェイクスピアを読もう!
 このところ、新国立劇場で「ヘンリー六世」(2009年)、「リチャード三世」(2012年)、「テンペスト」(2014年)とヴェルディのオペラ「フォルスタッフ」(2015年)を、続けて見たことがきっかけとなり、シェイクスピアの作品を読み直しています。読み直しているといっても前に読んだのは高校生のころで、「ちっとも面白くない!」という感想を持ったことしか覚えていませんから、はじめて読んだのと変わりません。しかし、ちくま文庫の松尾和子さんの新訳はたいそうわかりすく、読むのには昔のような苦労はありません。私のように前にシェイクスピアを読んだが面白くなかったという人は、ぜひ松尾さんの新訳でシェイクスピアを読むようお勧めします。

私のシェイクスピア入門
 オペラ「フォルスタッフ」はヴェルディの最後のオペラで最高傑作といわれています。シェイクスピアを崇拝していたヴェルディが、「ウィンザーの陽気な女房たち」をほぼ原作どおりオペラ化したもので、騎士フォルスタッフによる女性誘惑のドタバタ喜劇ですが、ヴェルディの荘重な音楽と「人生はみな冗談、人間はみな道化」という人生哲学がみごとに結合された深みのあるオペラです。
 騎士フォルスタッフは、シェイクスピアの「ヘンリー四世」2部作に出てくるヘンリー四世の息子ハル王子(のちのヘンリー五世)の若いころの悪ガキ仲間で、あちこちで悪業をするが憎まれないビヤ樽男です。「ヘンリー四世」を見てフォルスタッフをお気に召したエリザベス一世が、「この男に恋をさせよ」といったとかで、シェイクスピアが「ウィンザーの陽気な女房たち」を書いたといわれます。
 なお、本年の11月から12月にかけて新国立劇場で「ヘンリー四世」2部作が上演されます。騎士フォルスタッフの活躍を私も楽しみにしています。

シェイクスピアとエリザベス一世
 シェイクスピアは、1564年にイングランド王国のストラトフォード・アポン・エイヴァンで生まれ、1616年に52才で生まれ故郷で死亡しています。エリザベス一世が女王になったのは1558年で、1603年に死亡していますから、二人はほぼ同時期に活躍した人といえましょう。日本でいうとちょうど信長、秀吉、家康の時代です。日本のこの時期も歴史好きの者には大変興味深い時代ですが、ヨーロッパにおいても情勢が激変した時期でした。イギリス艦隊が「太陽の沈まぬ国」といわれたスペインの無敵艦隊を破ったのが1588年。小国イングランドが大英帝国に発展するきっかけとなったのでした。
 シェイクスピアが共同所有者となり俳優兼劇作家となっていた劇団は「宮内大臣(内務大臣?)一座」といわれ、宮内大臣(内務大臣?)がパトロンとなっていました。だからエリザベス一世をはじめ王室や貴族たちも見物にきていたのでしょう。

シェイクスピアの歴史劇
 「ヘンリー六世」3部作と「リチャード三世」とは、シェイクスピアの初期の歴史劇で、バラ戦争(1455年から1485年)の時代の王権をめぐる貴族同士の内紛を描いたものです。登場人物の多さと殺し合い、騙しあいの生々しさに、いささか重い気持ちにさせられたものでした。しかし、自身も肉親との権力争いを制して女王につき、その後も対抗者を処刑しているエリザベス一世が、先祖たちのこの骨肉の争いを観劇していただろうと考えると、若いシェイクスピアがこれらの歴史劇を書いた意図に興味がわいてきます。

「テンペスト」について
 「テンペスト」は、シェイクスピアの最後の作品といわれます。私は、高校生のころ、通っていた英語塾の先生が「テンペスト」を原文で読む授業をやっており、毎週、先生に指名されて一定の部分を読まされ、訳させられるのが大変苦痛であったことを思い出します。シェイクスピアの戯曲は古い時代の英文で書かれており、また「テンペスト」は夢のような部分が多いので、なかなか訳せず、ちっとも理解できませんでした。今回、観劇を機に「テンペスト」の戯曲を読み、こんなに面白い話だったのかとびっくりしました。
 ところで、シェイクスピアの戯曲は、原文で読まなければその面白さは理解できないのだろうなと感じています。誰か、シェイクスピアの戯曲を原文で読むことを教えていただける方はいないでしょうか。高校生に戻って勉強したくなってきたのですが。

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