コラム53:事務局員 中野 すみれ

ことば

2017.3.31 事務局員 中野 すみれ

 最近、『やばい』ということばについて、とある中学校の先生がクラスで使用禁止令を出した事がニュースになった。本来は「危険、不都合」の意味の隠語。困った時に「やばくない?」などと言う。しかし近年では、いい意味で『やばい』を使う人が増えている。驚いた時にやばいと言ったり、かっこいい、おいしい等沢山の使い方をしている。私もつい簡単に『やばい』を使っていることに気が付いた。

 この禁止令を出したことに対して賛否両論があるようだ。「口語は年月とともに変化するのだから自由に使うべきだ」これに対して「感動の表現をもっと豊かにする必要があるのでは」といったような意見だ。確かに現代の『やばい』には沢山の意味をカバーしてしまうオールマイティーのパイのような役割がある。たとえば「この映画はとてもおもしろかった」という感想を伝えるのに「この映画やばいよ」と言えば、とてもよかったというイメージが伝わる。しかも受け取り方によっては多用に解釈ができてしまう。曖昧な表現を好む日本の文化にぴったりのことばなのかもしれないと思う。

 古文の『いとをかし』の意味だって沢山の意味がある。美に対する感嘆や称賛などを表すことばで、意味をひとつに絞りきれないのが奥深さを感じさせるようだが、『やばい』もいつか古文になれば奥深いといわれる時代が来るのだろうかと考えるとおもしろい。
 現代はメールなどのSNSの普及により、ことばを“正確に”というよりも“簡単に”と進化したように思う。ことばを入れなくても絵文字やスタンプで会話が成り立つこともしばしばで、簡単にコミュニケーションがとれる事が重視されているのだろう。

 それに対して弁護士の先生方は、ことばをとても大切に使われている。ことばを使って主張や説得をしたり、事実を証明するわけなので先生方にとっては当たり前なのかもしれないが、文章も話しことばにしても選び方が慎重で絶妙だと感じる。法律事務所で働いてみて実感することだった。

 日々難しいことばが行き交う中、「あまりがんばりすぎないでね」と、ある時依頼者をお見送りする際に先生がかけたことばが、カリカリ仕事をしていた私の耳と心にふっと入ってきた。難しい言葉や進化した言葉、沢山言葉はあるけれど、心に響くすてきなことばを使える人になりたいと思ったひと時だった。

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