コラム36:事務局員 渡邊 ゆき

「右手に携帯、左手につり革で『痴漢』」から、逆転無罪!

2014.8.1 事務局員 渡邊 ゆき

 7月15日、東京高裁で1件の無罪判決が出されました。「三鷹バス痴漢冤罪事件」の被告とされた津山正義さん。その無実が認められた、待ちに待った逆転無罪判決です。

 津山さんは、2011年12月22日の夜、吉祥寺から仙川に向かうバスの車内で、女子高生のスカートの上からお尻を触ったとして、逮捕・起訴されました。

 その日はクリスマスも近く、津山さんは交際相手とデートをするために待ち合わせていました。途中で財布を忘れてきたのに気づき、勤務先である中学校に戻るところでした。津山さんが「触った」とされる時間帯には、リュックをお腹側にかけ、右手で携帯のメールを打ちながら、左手でつり革をつかんで立っている彼の姿が車載カメラに映っていました。同時刻に交際相手に送られたメールの通信記録も残っています。しかも、逮捕直後に警察署で行われた鑑定でも、津山さんの手からは、触ったとされるスカートの繊維は検出されませんでした。

 津山さんは「触っていない」と無罪を主張しましたが、一審(東京地裁立川支部)は、バスが大きく揺れたためにつり革を持った左手が映っていないわずかな時間があることを理由に、「右手で携帯電話を操作しながら、左手で痴漢行為を行うことは容易とはいえないけれども、それが不可能とか著しく困難とまではいえない」とし、罰金刑の有罪判決を下しました。

 私は、冤罪事件の支援をしている関係で津山さんと一審前に知り合い、何度も直接お話を聞きましたが、そのたびにその誠実さ、実直さに心をうたれました。「僕は、子どもたちに数学という学問の美しさを伝えたくて教師になった。なのに、犯してもいない罪を着せられて、生徒たちに会えないでいる。悔しい。」夢を持って、念願の教師になった彼が、痴漢などするはずがないと、私は確信しました。無実の罪で警察・検察の厳しい取り調べを受け、犯罪者に仕立てあげられ、教壇に立つことはもちろん、担任になった生徒の晴れの卒業式にも立ち会うことができなかった無念さ。奪われた時間。その苦しみは、はかりしれません。その上に、一審裁判所のあまりに理不尽な仕打ち。心底怒りを覚えました。

 逆転無罪を勝ち取るために、彼を支援する会による街頭宣伝や署名行動が連日各地で粘り強く行われました。「これから彼女とデートしようとしているのに、どうして痴漢なんかしなければならないのか。」津山さんの切実な訴えには大きな反響があり、高裁判決当日までに提出した署名は、4万4538人分にのぼりました。

 こうして迎えた、二審判決期日。東京高裁は、車載カメラ画像の鑑定結果を重視し、「カメラの映像では左手でつり革を持ち、右手で携帯電話を操作しており、痴漢をおこなったとは考えがたい」と判断。女子高生の供述を全面的に信用した一審判決を、慎重さを欠き是認することができないと厳しく批判、破棄しました。

 ・・・そして、たった今(7月30日)、検察が上告を断念し、晴れて津山さんの無罪が確定した、という知らせが入りました。我が事のようにうれしいです。津山さんが一日も早く生徒たちのもとへ戻れることを、心から願っています。

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