続・成年後見制度の見直しについて
令和6年11月29日のコラムで、成年後見制度に関する大幅な見直しの議論が法制審議会で行われていることを記載しましたが、令和8年6月17日、「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)が成立し、制度が大きく変わることが正式に決まりました。
成年後見制度は平成12年4月1日からスタートした制度ですところ、多くの問題点が指摘されてきた制度ではありますが、現実に多くの利用者の方がいます。最高裁判所事務総局家庭局が発表している「成年後見関係事件の概況-令和7年1月~12月-」によれば、令和7年12月末日時点の利用者数は合計で25万9901人(成年後見18万0828人、保佐5万8162人、補助1万8078人、任意後見2833人)とされています。
今回の法改正で非常に大きく変わる点は、①本人の判断能力の程度に関わらず、本人に合ったオーダーメイドが可能になること(後見、保佐の制度を廃止して補助の制度に一元化して本人にとって必要な範囲でその利用を可能とすること)、②現実問題として終わることができる制度になること(判断能力が回復していない場合でも、制度利用の必要がなくなったと家庭裁判所が認める時には制度利用を終了可能となること)、です。
①については、従前、最も判断能力が不十分な後見類型とされると、申立人や本人の希望とは関係なく、後見人に包括的な代理権、取消権が自動的に与えられることとなり、本人にはほとんど権限が残りませんでした。これに対して、補助類型の場合、本人の同意のもと、必要な事項についての代理権や取消権が補助人に与えられ、それ以外の事項については本人に権限が残ります。法改正後は、補助に一元化され、あくまでも特定の行為について個別に補助人に代理権を付与したり、補助人の同意を要するという状態になり、それ以外の権限は本人に残っている状態になります。
②については、従来の制度では、利用動機となっていた課題(例えば、遺産分割等)が解決しても、本人の判断能力が回復しない限り、制度利用をやめることができませんでした。それが、法改正後は、申立権者(本人、配偶者、四親等内の親族等)の申立てにより、家庭裁判所が制度利用の必要性がなくなったと判断すれば、制度が終了することになります。これは改正法施行前に制度利用がスタートしている件についても同様です(改正法施行前に後見や保佐としてスタートしている場合、その制度の利用を継続することも可能ですし、新制度に移行すること、制度利用を終了することも可能です)。
最も大きい変更点は上記2点ですが、他にも、本人の自己決定の更なる尊重を図るという観点から、解任事由に「本人の利益のために必要があるとき」が追加される(それにより、補助人に不正行為が無い場合でも、補助人が本人と面談を行わない等によって本人が適切な保護を受けることができない時などに解任可能になるとされています)、補助人が本人の死体の火葬・埋葬の契約の締結等を行うことが可能となる(法改正前は成年後見人のみ権限を認める規定がありました)等の点も改正となります。また、任意後見制度の見直しや遺言制度の見直しも行われます。
「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)は令和8年6月24日に公布されましたところ、成年後見制度の見直し部分は公布から2年6月以内に施行とされているため、令和10年中には施行されることになります。
理論的には、ニーズに合わせてスポット的に利用することが可能となり、これまでよりも利用のためのハードルが低い、利用しやすい制度になるものと思われます。ただ、実際にはどのような運用になるかが大きい面もあり、まだ不透明な部分もあります。成年後見制度のニーズ自体は今後も高まっていくと思われ、当職も強い関心を持っている分野ですので、今後も研鑽を重ねるとともに、更なる法改正や動向等に注視していきたいと思います。











